薬や化粧品をフリマアプリで転売しても大丈夫?法律と罰則について

余った処方薬やマスク、消毒液、化粧品をメルカリやヤフオクなどのフリマアプリで転売したいと考える人もいるかもしれませんね。しかし、最近ニュースで消毒液を高額で転売した人が逮捕されたり、化粧品の製造番号を消して転売した人が摘発されたりという報道がありました。

特に化粧品はよく転売されるアイテムの一つですが、なぜ摘発されたのでしょうか。今回は弁護士視点から、フリマアプリでの医薬品転売について詳しく解説します。

薬の転売は違法?

まずは、薬の転売に関する法律と罰則を確認してみましょう。

(1)薬の転売を規制する法律と罰則
薬の転売を規制しているのは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。この法律では、医薬品や医療機器の品質や安全性に関する規定が定められています。したがって、医薬品の転売を行う場合、この法律に違反する可能性があります。

フリマアプリなどで医薬品を販売する場合、医薬品の販売業の許可を受けていない一般の方は、薬機法24条1項に違反していることになります。この違反行為には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、高度管理医療機器の販売にも同様の規制があります。

(2)フリマアプリによる規制
さらに、フリマアプリ自体でも医薬品の販売に関する規制が行われています。メルカリなどのフリマアプリでは、医薬品や医療機器に関連する商品の販売を制限しています。

例えば、以下のような物品の販売は制限されています。

  • 医薬品
  • 販売に許可または届出が必要な医療機器
  • 医薬品成分を含む製品
  • 動物用医薬品
  • 製造や小分けが許可されていない医薬部外品
  • 薬機法に抵触する薬効表示や標榜を含むもの
  • 空の薬シートやボトルなど

また、化粧品の製造や小分けに許可がない場合や、法令に抵触するサプリメント、規制薬物・危険ドラッグ、新型コロナウイルスに関連する商品なども販売の対象となります。これらの物品を販売すると、取引がキャンセルされたり、商品が削除されるだけでなく、利用制限が課されることもあります。

医薬品販売業の許可なく薬の販売はしてはならない

医薬品販売業の許可なく、医薬品を業として販売することは違法です。では、医薬品に該当する物品はどのようなものなのでしょうか。具体的な条文や例を見ていきましょう。

(1)薬機法における医薬品の定義
薬機法では、医薬品を以下のように定義しています。

  • 日本薬局方に収められている物
  • 人や動物の疾病の診断、治療、予防に使用される物で、機械器具ではない(医薬部外品を除く)
  • 人や動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的とされる物で、機械器具ではない(医薬部外品を除く)

なお、「日本薬局方」とは、厚生大臣が定める医薬品の規格基準書のことを指します。

(2)薬機法で販売が禁じられている製品の例
薬機法では、以下の商品の一般の方による売買を禁止しています。

  • 医療機関で処方された医薬品
  • ドラッグストアで販売されている医薬品
  • 中古の医療機器
  • コンタクトレンズ
  • 個人輸入した医薬品、医療機器

例えば、ポビドンヨードを含むうがい薬は医薬品に該当し、フリマアプリで転売すると薬機法違反となる可能性があります。また、病院で処方された薬の転売も違法です。特に向精神薬の転売は、麻薬及び向精神薬取締法に抵触する可能性があります。向精神薬を営利目的で無許可で譲渡した場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

(3)医薬品かどうかを確認する方法
手元にある市販薬が医薬品かどうかを確認するには、製品表示や外箱を確認することが簡単な方法です。

以下の表示がある薬は医薬品であり、フリマアプリなどでの転売や出品はできません。

  • 要指導医薬品
  • 第一種医薬品
  • 第二種医薬品
  • 第三種医薬品
  • 体外診断用医薬品

また、何の表示もない製品も注意が必要です。医薬品や化粧品の販売は、薬機法で禁じられています。購入先が不明な物や表示がない物の販売は避けるべきです。

出品・転売できる物の種類は?

薬機法や麻薬及び向精神薬取締法に違反せずに、フリマアプリなどに出品・転売できる物の具体的な例と注意点を説明します。

(1)出品・転売可能な商品の種類
販売許可を得ていなくても、以下の商品は出品・転売が可能です。

  • 国内製の医薬部外品
  • 国内製の化粧品

医薬部外品とは、人体への作用が軽いもので、あせもやただれの予防、口臭・体臭の防止、育毛、除毛などの目的で使用される商品です。医薬品はドラッグストアや薬局で購入できますが、医薬部外品はスーパーなどでも手に入ります。

(2)出品する際の注意点
国内製の医薬部外品や化粧品でも、以下の2点に注意しなければ薬機法に違反する可能性があります。

  • 虚偽広告、虚偽記載
    販売時に、実際に製品に含まれていない効果を宣伝することは禁止されています(薬機法66条1項)。

例えば、美白化粧水を転売する際に、「シミが消えます」と書いたり、まつげ美容液を転売する際に、「まつげが長くなります」と宣伝することは違法です。

  • 法定表示がない場合の販売
    医薬部外品や化粧品には、薬機法で定められた項目を表示することが求められています。これを法定表示といいます。法定表示がない状態で医薬部外品や化粧品を販売することも薬機法違反です(薬機法59条、61条)。

例えば、医薬部外品や化粧水の製造番号を消して転売する行為は違法と判断される可能性が高くなります。